Archive for the ‘酪農’ Category

9月2日 牛が草地を作る

本格的な収穫期の9月に入りました。まだ最終的な数字は出ていませんが既に終了した秋撒き小麦は十勝管内においては過去最高の収穫量になりそうです。実の量に比例して逼迫していた家畜の敷き料となる小麦わらもとりあえずはかなりの量が確保出来たようですね。

さて、今年は国連が制定した「国際土壌年」安定的な食料生産やそれに基づく貧困撲滅など我々のような一次産業に直接関わる者はもちろんのこと、社会経済的にも土壌について考えることはとても重要な問題なんですね。

そんな中、先日当社の取引先でもある上士幌町(有)十勝しんむら牧場さんにおいて「TheEarthCafe」国際土壌年企画「土と草と牛と」が開催されたので参加してきました。

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新村社長より牧場の概要説明の後、草地へ移動し帯広畜産大学の谷先生、㈱ズコーシャの丹羽農業技術士よりこの地の土壌の生い立ちの説明を受け、その後草地がどのように変化して行ったのかレクチャーを受けました。

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新村社長が牧場経営に携わるようになり放牧酪農を取り入れてほぼ20年、正確な土壌診断による肥培管理の結果、草の嗜好性の向上や土壌におけるミミズを始めとする小動物や微生物の多様化など明らかに草地に変化が出て来ました。

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特に興味深かったのがこの放牧地、決して人間が機械的に草地の維持管理を行った訳でもなく、俗に言う草地更進なども行わなくとも、ルートマットが殆ど形成されていなく、谷先生も驚いていたのが表層から80センチ程度まで牧草の根が下りていることでした。通常は30センチ程度しか牧草の根は下りないと言われていますのでこの放牧地が如何に生産性の高い草地になっているかと言うことがよく理解できます。

「ミルクジャム」で有名な(有)しんむら牧場さんですが、原料となる良質な生乳生産はこの草地と牧草が支えているんですね。正しくこれこそが「牛が作る草地」です。

 


6月1日 畜産バブル?

先月53歳になりました。人生初の手術入院で誕生日を病院のベッドで過ごしました。ブログの不具合も相まって5月中のブログ更新は叶わず、6月の初日を迎えてしまうことになりました。
3週間もの間、仕事を離れたのも初めてですし、3週間お酒を飲まなかったのも初めての経験でした。ただお取引先の全ての皆様のご理解とご協力で何とかこの状況を乗り切ることが出来たことに大変感謝をしています。もちろん家族の皆にも。

このところ全ての牛の高値が続いているようです。和牛、乳牛、老廃牛など軒並み前年の価格を大きく上回っています。牛ももちろん需要と供給により価格が形成されるので全てにおいて牛が不足していると言うことなのでしょう。乳牛の不足は生乳生産の不足に直結し、先日の報道にもあったように年末の需要期へ向けてバターの緊急輸入措置が既に決まったようです。

先日、知り合いから民間の金融機関が酪農家の規模拡大のために莫大な融資を行なうと言う話を聞きました。今までの農協金融ではとても考えられない金額でした。
過去の日本経済のバブルを煽った一つの原因に金融機関の過剰な貸付がありました。貸出先を失ったマネーが今、正に畜産の現場に押し寄せて来ているのでしょうか?

継続的な畜産事業発展のために適正な投資は当然でしょうが、ちょっと常軌を逸している感が拭えません。牛の価格の上昇も永遠に続くなんて事は絶対にあり得ません。最後にババを握らされるのは一体誰になるのでしょう?


4月15日 所詮、安売りかよ!

今月二度目のブログ更新です。4月に入り十勝管内では畑の作業も少しづつ本番を迎えつつあるようです。

昨年来、北海道の酪農業界では系統を離脱しての生乳出荷が話題になっています。
先週、日経新聞にこのような記事が出ていました。

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北海道以上に離農が進む本州の酪農、原料乳の確保を目的として北海道からの生乳買い入れが始まりました。
一部の報道では、酪農の本場北海道からの良質な生乳を本州の消費者に届けるとの報道もありました。(しかし実際の所はそれほど乳質は良くない生乳との噂も聞きますが)てっきり北海道の生乳の良さを伝えてくれるものと思っていたら、何てことは無く系統手数料を省いた分、安く販売しているだけのことに過ぎなかったとは。水より安い牛乳と揶揄され、少しでも牛乳と言う製品の付加価値を高めていかなければいけないはずなのに。これではいつまで経ってもスーパーの目玉商品から脱却出来そうに無いですね。何とも情けない話です。


1月15日 三つのゆとり

新年早々、不覚にもスキーで怪我をしてしまいました。小さい頃からスキーをやって来て骨折こそしなかったものの、左脚のふくらはぎ肉離れ、右肩の腱の損傷とこんな怪我は始めてです。以前だとそれなりのリカバリーが出来たはずなのにこれも間違いなく加齢の影響なんでしょうね。何とも情けない話です。

生乳の不足から端を発した年末のバター不足騒動、その根底には酪農家戸数の減少と言う問題があります。そんな理由のせいか今年の乳価交渉が早々と決着したようです。モノが溢れる今の時代、多少不足気味の方がスムーズな交渉結果に至ったと言う皮肉な話でもありますが。

酪農家戸数の減少、いわゆる離農と言う問題についてですが、私がこの業界で仕事を始めた時に「酪農経営を行っていくための三つのゆとり」こんなテーマの講演を聞いた事が今でもずっと記憶に残っています。
生き物や自然を相手に1年365日休みなしの酪農経営(今では酪農ヘルパー制度がありますが)だからこそ、この三つのゆとりのバランスが取れないと経営主本人は勿論のこと、決して後継者も育たたないと話されていました。

その三つのゆとりとは

1、経済的なゆとり   経営ですから、毎年赤字続きで良い訳がありません。投資の回収を行うためにも黒字経営は基本です。

2、労力的なゆとり   昔の人なら、寝る暇を惜しんで働き家族サービスなど二の次で良かったかも知れませんが、今の時代の経営者にそ れは許される話ではありません。

3、精神的なゆとり   意外とこの三つ目のゆとりと言うのは個人差もあり一緒に働く家族との価値観の共有もありますので意外と重要なゆとりかも知れません。

この三つのゆとりと言うお話は家族経営を前提とした話であったと思います。家族経営から規模の拡大や法人経営がこれからの生き残る道だと言われますが、乳量500t出荷の牧場10戸が5000t出荷の牧場一つになれば良いと言う話でしょうか?
生産乳量は同じかも知れませんが、経営者は10人から1人になってしまう事になります。ただ経営能力の無い人が経営を行う事ほど悲劇的な話はありません。今の時代に求められている酪農経営者像は規模の拡大の追求だけでなくこの三つのゆとりのバランスを取る能力を持ち得ているのか。昨今の酪農家の離農と言うニュースに触れる度にこの話を思い出します。


12月1日 勉強は大切です!

師走に入りました。今年は衆議院の解散総選挙でいつも以上に慌ただしい年の瀬になりそうです。

先日、第29回目のグラスファーミングスクールに参加してきました。このグラスファーミングスクールは年に2回開催され、春は北海道内の牧場で土壌や草地のフィールド学習をメインに。秋は札幌で財務、経営理念、複合経営、投資など様々な分野の専門家を招いて酪農経営の座学を行います。
参加者は北海道内は元より最近は本州からの参加者される酪農家さんもいます。アルコールを入れながら真夜中まで行われる”夜なべ談義”はそれぞれが抱える悩みを解決するヒント盛りだくさんです。

最近、あらゆるメディアを通じて年末の需要期に向けてバターが足りないと報道されています。様々な原因がありますが、何と言っても一番大きな原因は酪農家の担い手不足です。
現在、日本国内の総酪農家戸数は1万9千戸ほどと言われていますが、この10年ほどの間では1万戸あまり、実に35%も減少しました。この減少率は尋常ではない数字です。
酪農家の戸数が減少した分、法人経営などの大規模牧場がその生乳生産をカバーして来ましたが、適正な労働力の確保や、為替相場の変動による飼料や資材価格の高騰などで、それも思うようには進んでいないのが現状です。

このまま酪農家戸数が減少していくとどのようなことが起きるのでしょうか。
家族経営の小さな牧場が無くなることは地域社会においても決して良いことではありません。かと言ってボランティアや補助金ありきの酪農経営で良い訳もありません。先が見えない、漠然と将来が不安などと考える前に前向きで意欲溢れる参加者が多く集うグラスファーミングスクールに参加してみませんか?


11月19日 カルシウムを侮るなかれ!

突然の衆議院解散総選挙で、慌ただしい年末を迎えることになりそうです。一部の大企業や中央ではアベノミクスの多大な恩恵を受けている所もあるのでしょうけどね。昨今の急激な円安の行方も気になる所です。

先日、帯広畜産大学とウイスコンシン大学のオープンセミナーに参加して来ました。「バレイショ栽培におけるカルシウム施肥の重要性と北海道でのチャレンジ」と言うテーマでの講演でウインスコンシン大学のジワン・バルタ教授は、バレイショ栽培とカルシウム施肥の関係を永年に渡り研究されている先生でした。

当社も創業以来、乳牛・肉牛や競走馬に向けて天然アパタイト(骨灰)を、土壌改良剤としては骨炭と言う形でリン酸カルシウムの供給を行って来ています。
残念ながら当社のような零細企業においては研究部門はありませんが、農業生産者や酪農家、競走馬関係の方々から当社製品使用においての現場での成果を聞かせて頂いている中でカルシウムの重要性を強く感じつつ日々の営業活動を行っている所です。

このHPの冒頭にも書いてあるように日本は火山国であり、元々がカルシウムをはじめとするミネラルは不足している土壌で、しかも年間の降水量も多く、カルシウムをはじめとする塩基は常に流亡を続けている状況にあります。
故に、そのような土壌で育った作物は必然的にミネラル含有量も低い状況にあり、また日本の水も軟水が多いのもそのような理由によるものです。厚生労働省が毎年行っている国民栄養調査ではこれほど飽食の時代になりあらゆる栄養素が過剰状態であるにも関わらず、カルシウムだけは常に充足されていない状況にもあるのです。

畜産や競走馬の世界では欧米と日本の乳牛や馬の骨格の違いと言う話しをよく耳にします。人間の骨格や体型などは短い時間の間においては急激な変化は見られませんが、輸入精液が主流となっている酪農においてこれだけ改良が進んでも、まだまだ北米などの牛との体型には大きな隔たりがあるようです。これも土壌の違いとまたそこに存在する水の違いが関係しているのでしょう。

今回、ウイスコンシン大学のジワン・バルタ教授は作物や全ての生き物においてカルシウムは細胞構成において非常に重要な元素であり、生き物作物全てに共通すると言われていました。
もちろん作物においてはバレイショだけの問題では無いと思いますし、家畜栄養学がどんなに進んでも、ことカルシウムに関する学問は昔から殆ど変わっていません。

たかがカルシウム、されどカルシウムです。今一度このカルシウムについて見直してみてはいかがですか?

 


9月25日 生乳の系統外出荷

今年度の上半期も残すところあと1週間を切りました。本当に時間の経過が早く感じます。

今朝の北海道新聞、地元の十勝毎日新聞は両紙とも幕別町内の大規模酪農家が指定生産者団体を通さずに生乳の本州送りを始めたとの記事が一面に掲載されました。

この件について私が感じていることを書いてみたいと思います。
以前からこの情報は私の耳に入っていましたが率直に私の感想としては、大規模経営を行なっても結局の所、1kg当たりの生乳の生産コストは下がらないと言うことが証明されたなと言う事です。
私も酪農に関わる仕事をして30年ほどになりますが、酪農の大規模化はここ10数年もしくは20年ほど前から始まったでしょうか。その時の謳い文句は「来るべき60円台の乳価の時代に備え規模を拡大しスケールメリットを追求せよ!」であったと私は記憶しています。ところが現在の乳価はどうなっているでしょうか。60円台どころか、70円台でもなく、乳成分にもよりますが現在は北海道の酪農家のプール乳価でも90円前後に達しています。
法人イコール企業ですから、安定的な雇用の確保、職員の福利厚生なども含め、あくなき利益の追求をしていかなければならないのが法人の宿命です。最低のコストで生産し、最高の価格で買ってくれるところへ製品を出荷すると言うことは全く不思議な話ではありません。
ただ残念ながら新聞記事によると飼料や燃料価格の高騰により酪農経営が厳しくなったため、高値の納入先を求め本州へ直接生乳を出荷と記されていますが。
この大規模酪農家が北海道内の乳価格では採算が合わなかったのか、それともより儲けようと思ったのか、実際の所はご本人に聞いてみないと分かりませんが、本州では北海道以上に離農が進み原料乳の確保が死活問題となっている本州の乳業メーカーと思惑が一致したことは間違い無いのでしょう。
現在の酪農家の手取り乳価が適正か否かは別にして、一般的には需要に対して供給が不足する場合はモノの価格は上昇し、またその逆の場合は価格は下落します。残念ながら現在の乳価はそのような状況に良くも悪くも即影響されない仕組みになっています。
この生乳の系統外出荷事例に関しては、現在の酪農生産現場やこれほどの大規模酪農経営の出現を想定していなかった指定生産者団体による一元集荷制度の限界も垣間見ることが出来ます。
いずれにせよ、この事例に関しては現在の制度に一石を投じる事になると私は感じています。


8月12日 最近の酪農情勢に思う

心配された台風11号も十勝ではさほど大きな被害は出なかったようです。甲子園で開催される夏の全国高校野球選手権大会も開会式を含め二日も順延するなんてことも前代未聞だったようです。こんなところにも最近の気象状況の変化が感じられますね。

私が畜産関係の飼料販売に携わり30年ほどになりますが、最近の酪農をめぐる状況に心配なことが多く感じられます。現在、世界的には中国を始めとして振興工業国の経済発展に伴い乳製品の国際価格が上昇しているようですが、一方、日本国内においては少子高齢化や人口減少による胃袋のサイズダウン以上に、全国的な酪農家戸数の減少により生乳生産は需要に追いつかないほど生産も伸びていないようです。

今日の日本の酪農はアメリカやカナダなど北米を中心とした地域からの大豆やトウモロコシなどの穀物飼料とその飼料給与技術、乳牛の遺伝的改良により発展してきたことは間違いない事実です。しかしながら現在、バイオエタノール向け需要などによる輸入穀物価格の上昇、日本政府の金融緩和政策による円安誘導の結果、輸入品の価格上昇による生産費用の増加にも拍車が掛かっています。

私にはよく理解が出来ないのですが規模拡大によるスケールメリットの追求などの掛け声により、草地基盤以上の乳牛飼養は必然的に外部からの資材調達率の増加を招き、結果的に自助努力では如何ともし難い円安や海外での穀物価格の上昇に振り回される経営を招きます。

一般的な製造業であるならば、それぞれの企業において原材料価格の上昇分を製品価格の値上げとして転嫁を図る事になるのでしょうが、護送船団の酪農業界においては、既得権を持った指定団体のみに乳価の交渉をゆだねなければならず、そのシステムは昔、生乳が過剰生産され生産調整の一環として食紅を入れて廃棄処分した時と何ら変わっていません。

酪農家が生産した生乳と言うのは、出荷先が所属する地元のJAと言うのが通例で、隣のJAが高く買ってくれるから隣のJAに集荷して貰うと言うシステムではありません。ところが最近、全国的に乳業メーカーの原料となる生乳不足により、ここ十勝管内の酪農家が単独で関東圏の乳業メーカーに直接原料を供給し始めたと言う話を聞きました。詳しい内容については判り兼ねますが、需要と供給の原則から言うならばモノが不足しているときにモノの価格は上がり過剰になれば価格は下がると言うのが常識です。野菜などは過剰になり出荷しても採算が合わなければ畑に鋤き込むなどと言うことは今でも良く聞く話です。酪農業界においては暗黙のルールで北海道は価格の安い原料乳向け、本州は価格の高い飲用乳むけと言うものがあります。おそらくこれは力の弱い本州の酪農家を守るための方法だったと思われますが、その本州の酪農家の離農も進む一方で原料乳の供給を受けなければ死活問題となる乳業メーカーが暗黙のルールを破り高く売りたい酪農家と原料供給を受けたい乳業メーカーの思惑が一致した結果だと思われます。

私がこの業界に入り、暫くしてから急激に酪農家の規模拡大が進み始めました。1頭1頭の乳牛を繋いで飼養する方法から、フリーストール方式と言い、沢山の乳牛を繋がずに飼養する方法です。確かその時の私の記憶では来るべき乳価60円代の時代に向けてと言う言い方であったはずです。ところが最近の乳価は90円も越している所もあります。来るべき60円台乳価時代に向けて規模を拡大した酪農家は果たして儲かっているのでしょうか?
個人差は別としてですが、本来であるならばオールハッピーになっていなければいけないのではないでしょうか。

このような状況下でも酪農家戸数はなぜ減少していくのでしょうか。地域によっては新規就農者を積極的に受け入れる所もあるようですし、またその反対に全く担い手を育てようともしない地域もあるようですが。酪農家姉弟の跡継ぎに対する考え方も昔から比べると大きく変わっているようです。新たな担い手を育てると言うことは喫緊の課題だと感じます。

また私は自立した酪農経営と言うものは規模の大小や1頭当たりの年間乳量が高いとか低いなどの問題では無いと思います。為替相場や穀物輸出国の都合で如何様にもされてしまうシステムに乗らない酪農経営こそが今一番大事な事では無いでしょうか。

アメリカの余剰穀物と言うハードと、それを用いた飼養方法や乳牛の改良と言うソフトで、もはや穀物依存酪農から抜け出せない状況に冒された日本の酪農。私は、今まさにそこからの自立が試されているような気がしてなりません。そうでなければTPPによる関税撤廃で自国の畜産物を買えと言うやり方はあまりに理不尽だとは思いませんか?

 

 


5月31日 土と草とファームデザイン

今日で5月も終わり、最低、月に一度は更新しようと思っていたブログもなんとかギリギリセーフです。今年の北日本はエルニーニョ発生の影響により冷夏との予報が出されていますが、ここ数日は5月としては記録的な暑さになっています。一昨日は遠軽町が33℃を越え国内で一番暑い場所だったようですが、その遠軽町から車で1時間ほどにある紋別市と滝上町で今年の春のグラスファーミングスクールが2泊3日の予定で開催され参加してきました。
輸入飼料価格の高騰が酪農経営をジワジワと圧迫する中、放牧酪農が改めて見直され参加者も年々増えており、今後、放牧の導入を検討している酪農家さんも幾人か参加されているようでした。ただ放牧酪農が見直されているとは言え、北海道内ではその数もやっと4%を越えた戸数らしいですが。
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フィールドワークは炎天下の中、滝上町の小野牧場さん87頭の経産牛を32ヘクタールの放牧地で飼っています。

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今回のグラスファーミングスクール講師として、初登場、我らが帯広畜産大学土壌学の谷昌幸准教授、またの名を穴掘りのレジェンド!
今回は人が手を入れ草地にした所と、隣接する森林の土壌の違いをわかりやすくレクチャーして頂きました。これは大変興味深いお話でした。

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帯広畜産大学を退官され、現在はフリーで活躍されている昆虫学が専門の倉持勝久先生、自分達が排泄した糞がどのような虫達により分解利用されているのか、牛達も興味津々で聞いている様子!

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このスクールの主任講師、NZのガビン・シース博士からは、いつものように放牧草のお話。恐らく日本国内ではフィールドでこれだけ放牧草の事を語れる専門家はいないと思われます。

来年は道北の中川町での開催が既に決まっていますが放牧酪農を考えている方は是非とも参加をお薦めします。仲間作りはとても大切な事だと私は考えます。

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因みにグラスファーミングスクールに参加している間にこのような記事が地元新聞に掲載されました。


3月4日 NZ酪農スタディツアーに参加して来ました。

先月、世界一の競争力を持ち以前から一度は自分の目で見てみたいと考えていたNZの酪農を見てきました。
当別町にあるファームエイジ株式会社の主催で行われたツアーで今回で26回を数えます。

一昔前はNZと言えば羊のイメージが強かったのですが、羊肉価格の低迷によりNZ全土でピーク時7,00万頭いた羊も現在は3,000万頭まで減少しているのだそうです。

一方、中国を始め東南アジア地域などの経済発展の影響もあり乳製品の国際価格も高騰し、現在NZ国内では酪農ブームの真っ只中で生産者の乳価の手取りも過去最高の水準にあり旺盛な投資が行われていました。

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現在、NZの脱脂粉乳やバター、チーズを始めとする乳製品は世界50カ国に輸出され輸出金額では25%を占める国の基幹産業です。1980年代に国の政権が大きく変わり酪農に対して支出されていた補助金は全てカットになり、結果的に今日のような青草を最大限活用した酪農技術が確立しました。

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NZは大きく北島と南島に分かれます。酪農の歴史は北島が古く現在でも家族を中心とした経営が多いようですが、今回我々が訪問したのは南島でクライストチャーチから車で2時間ほどにあるカンタベリー地方で1戸平均の面積が200ha、搾乳牛の頭数も700頭前後と大規模な経営が行われている地域でした。

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NZ酪農がなぜ世界トップクラスの競争力を持つことができたのか?その一つの答えがシェアミルカー制度です。牧場のオーナーと契約を結び牧場経営のほぼ全般を任せられるマネージャーのような存在。もちろん経営を任せられる訳ですから利益を上げなければ継続的な契約を得る事も出来ません。
上の画像に移っているのが今回のツアーのコーディネーターで現地通訳も引き受けていただいたNZ国内唯一の日本人シェアミルカーの和田宏児さんです。
NZには日本のような総合農協はありません。当然、資金などは市中の金融機関からの借り入れで事業を行なわなければならず必然的に自己の経営の財務管理や事業計画を明確にプレゼンテーション出来なければ、オーナーとの契約や金融機関からの資金の借り入れなども上手く行きません。
和田さんからその辺りのお話を伺い、経営に対する環境の厳しさは日本の比では無いと感じました。

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いくつかのスーパーを覗いて驚いたのですが、それはミルクやチーズなどの小売価格が安くないことでした。NZドルが85円前後でしたので、日本円に換算してもむしろ日本国内で販売されている価格より高いのです。また最近は特に酪農ブームで農地価格も上がっており潅水条件のある牧草地だと日本円に換算して反当り40万円前後にもなり、法律で定められている時間当たりの最低賃金も日本円換算で北海道のそれより遥かに高く1,000円を越していました。

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現在も政府からの酪農に対しての補助金は全く無い中で、広大な面積を利用し緻密な集約放牧酪農経営により世界で一番競争力のあるNZ酪農の一端に触れることが今回出来ました。
ただ全く死角が無いかと言えばそうではなく、ここ数年マメ科のクローバーの葉だけを食べる虫の発生や、尿素などの窒素肥料の多用による環境汚染など今後は規制による生産抑制も出てくるという話も聞きました。
どこの国でも酪農と環境汚染問題は切り離して考えることは出来ないようです。

行った先でTPPの話題など全く出なかったことも印象的でした。現在NZの生産者が手にする乳価はkg当たり日本円換算で60円、日本が現在80円ほどですので、どう考えてもTPPによりNZから大量の乳製品が怒涛の如く流れ込んでくるとは考えられませんでした。


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