Archive for the ‘畑作’ Category

11月19日 カルシウムを侮るなかれ!

突然の衆議院解散総選挙で、慌ただしい年末を迎えることになりそうです。一部の大企業や中央ではアベノミクスの多大な恩恵を受けている所もあるのでしょうけどね。昨今の急激な円安の行方も気になる所です。

先日、帯広畜産大学とウイスコンシン大学のオープンセミナーに参加して来ました。「バレイショ栽培におけるカルシウム施肥の重要性と北海道でのチャレンジ」と言うテーマでの講演でウインスコンシン大学のジワン・バルタ教授は、バレイショ栽培とカルシウム施肥の関係を永年に渡り研究されている先生でした。

当社も創業以来、乳牛・肉牛や競走馬に向けて天然アパタイト(骨灰)を、土壌改良剤としては骨炭と言う形でリン酸カルシウムの供給を行って来ています。
残念ながら当社のような零細企業においては研究部門はありませんが、農業生産者や酪農家、競走馬関係の方々から当社製品使用においての現場での成果を聞かせて頂いている中でカルシウムの重要性を強く感じつつ日々の営業活動を行っている所です。

このHPの冒頭にも書いてあるように日本は火山国であり、元々がカルシウムをはじめとするミネラルは不足している土壌で、しかも年間の降水量も多く、カルシウムをはじめとする塩基は常に流亡を続けている状況にあります。
故に、そのような土壌で育った作物は必然的にミネラル含有量も低い状況にあり、また日本の水も軟水が多いのもそのような理由によるものです。厚生労働省が毎年行っている国民栄養調査ではこれほど飽食の時代になりあらゆる栄養素が過剰状態であるにも関わらず、カルシウムだけは常に充足されていない状況にもあるのです。

畜産や競走馬の世界では欧米と日本の乳牛や馬の骨格の違いと言う話しをよく耳にします。人間の骨格や体型などは短い時間の間においては急激な変化は見られませんが、輸入精液が主流となっている酪農においてこれだけ改良が進んでも、まだまだ北米などの牛との体型には大きな隔たりがあるようです。これも土壌の違いとまたそこに存在する水の違いが関係しているのでしょう。

今回、ウイスコンシン大学のジワン・バルタ教授は作物や全ての生き物においてカルシウムは細胞構成において非常に重要な元素であり、生き物作物全てに共通すると言われていました。
もちろん作物においてはバレイショだけの問題では無いと思いますし、家畜栄養学がどんなに進んでも、ことカルシウムに関する学問は昔から殆ど変わっていません。

たかがカルシウム、されどカルシウムです。今一度このカルシウムについて見直してみてはいかがですか?

 


9月30日 北海道産たんぱく質飼料

今日で9月も終わりです。明日10月からは、また配合飼料価格が実質の値上げになるようです。7年後の東京オリンピックの開催も決まり何となく世の中、景気回復と言う雰囲気が漂う中、ちょっと穀物自体が安くなった所で円安の状況が続く限り、輸入品価格は下がることはありません。特に今年は自給飼料であるデントコーンが病気や台風の影響による倒伏などで、収穫量が落ちていると言う話を各地で聞きます。しばらくは酪農家さんにとって厳しい状況が続きそうです。

さて現在、当社では国産飼料の自給率向上を目指すべく、農研機構北海道農業研究センターと北海道産ナタネカス飼料利用の共同研究を行っています。私が社外の役員を引き受けている㈱エコERCでは、北海道産ナタネの栽培、搾油を手がけていますが、北海道内で栽培されているナタネは「キザキノナタネ」と言う品種がほとんどで、この品種の油カスは、残念ながら飼料として利用することは出来ません。現在は北海道内の一部で栽培されている収量性の若干低下する「キラリボシ」と言う品種が、グルコシノレート、エルシン酸をほとんど含まないと言うことで飼料としての使用が認められています。現在は芽室町にある㈱大野ファームさんで少しではありますが飼料給与を行っていただいています。

先日、十勝管内池田町で「キラリボシ」の秋播きを行い、その状況を確認して来ました。

およそ5ヘクタールに播種を行いました。


9月11日に播種を行い、越冬前までに畝が塞がることが目標です。

ナタネは油糧作物であり、一番の目的は油を搾ることです。一般的にナタネ油と言うとキャノーラ油を思い浮かべる方がいると思いますがキャノーラと言うのは、アメリカのモンサント社が開発した遺伝子組み換えのナタネの品種名です。石油系の薬剤を用いて溶媒抽出を行い、スーパーなどの特売品の代名詞になってしまったような食用油ですが、本物の身体に良い油は色も香りもあり、全く別物と言っても良いほどです。そのような本当に身体に良い油が一般消費者にもっと受け入れられれば、家畜の飼料に回る油かカスも増えることになるのですが。


8月1日 小麦受難

今日から8月、一昔前の北海道ではお盆が過ぎると涼しい秋風が吹き始めるなどと言われたものですが、ここ近年はどうも様子が違うようで長期予報でも8月はまだまだ暑い日が続くようです。ところが収穫時期を迎えた秋播き小麦にとってはここ最近の梅雨のような天気でコンバインも畑に入れず倒伏し始めている小麦畑を各地で見かけます。一部では穂発芽してしまった所も出ているようです。小麦は倒伏により品質の低下が懸念され、また収穫作業に余計に手間がかかってしまいます。改めて天気相手の仕事である農業のやるせなさを感じますがこのような現象も農業を理解することにおいては大事な事なんじゃないかと思うのです。


6月4日 発芽の季節

6月に入りました。アベノミクスによる為替と株価の乱高下同様、北海道内でも地域によって極端な気温の寒暖差があるようです。先日、北見方面の取引先との話の中では、既に植えつけたジャガイモが畑の中で腐ってしまい廃耕にした圃場も出ているようです。これも自然の厳しさなんですね。

農業に関わる仕事を長年やっていても、毎年この発芽時期は特別なものを感じます。

たった一粒の小さな種から、牛の飼料となるデントコーンや、砂糖の原料となるビート、ポテトチップスの原料となるジャガイモなどがこれから収穫の秋に向けて大きく育っていくことを祈らずにはいられません。


5月20日 今年の春は・・・

一ヶ月以上更新の間隔が空いてしまいました。もちろんブログをやっていたことを忘れていた訳ではありませんよ。
今年の北海道の春は記録的に遅い春となっています。5月に入っても各地で雪が降り、気温も上がらず当然、大型連休中に桜の開花は見られないといった状況です。ところが本州はと言えば既に30度を越す日が続出、早々と熱中症の被害に合う人も出ているとか。南も北もお見舞い申し上げます。と言ったところでしょうか。

TPP問題で一番影響を受けると言われる国の重要品目の作付けウエイトが高い我が十勝地方の畑作農業、今日は未だ桜の花の開花宣言すら出ていない浦幌町で畑作農業を営む取引先の直播ビートを見せてもらいました。今まではペーパーポットで苗を育てた後、移植を行っていたのですが昨今のビート栽培には向かない気象条件と先行きを考慮し、今年度から初めての試みです。

浦幌町のこの地域ではまだどこも直播栽培は行われていないとの事です。発芽した苗を風などから守るためにえん麦を先に撒くのだそうです。

えん麦は既に伸びていますが、やっとビートも発芽して来ました。どこにあるかわかりますか?

 


8月23日 転換を求められるのは畜産だけではない?

今日もまた、朝からジリジリと強い日差しが照りつけています。昨日は輸入穀物の争奪や価格高騰により畜産経営を見直さなければと書きましたが、畜産だけではなくと畑作経営も見直さなければいけない状況が訪れているようです。

最近の北海道新聞の記事ですが、ビート(砂糖大根ですな!)は、輪作体系の中に組み込まれた作物でした。しかしながら新聞記事によると年々その作付け面積は減少の一途をたどっているようです。事実、うちの取引先農家の方たちでビートの生産を止めた方も少なくありません。その理由として近年の温暖化などの影響で病気の発生や糖度の減少など収入に対して生産費が掛かる。現実的に人件費を計算すると春早くから秋遅くまでかなりのコストになる。元来、寒冷地向けの作物であったビートのメリットが無くなってきたというもの。
それでもビートを作り続ける農家の方たちの理由としては、他に作る作物が無い、機械類の償却が終わっていない、コストの掛かる移植から直播に変えるなど、それぞれが対策を考えているようです。

私、個人の考えとしては今までの、目一杯作物を作るという考え方から畑を休ませるというのも一つの方法と考えますが、どうでしょうか?


7月11日 これからの十勝農業のモデル?

ずっと高止まりが続いていた穀物の国際価格がさらにここに来て史上最高値に近づいて来ています。主産地であるアメリカ中西部の熱波の影響によりシカゴ穀物市場では前月比でトウモロコシが約40%、大豆も20%の値上がりだそうです。
11日には農務省から需給報告が発表されるようですがどのような内容になるのでしょうか?

そんな状況の中、先週末は足寄・本別地区会による「第5回同友会とかち支部地区会交流会」が開催されました。恒例になった地区会交流会では地元の産業を知ってもらおうということで現地視察を行っていますが、その中の大規模畑作農場と肉牛牧場の2軒の報告をしたいと思います。

いずれの2軒も当社の取引先ですが、まずは本別町の(有)石山農場さんは、畑作農業の先進地であるヨーロッパを幾度も訪れ大規模機械の効率的利用により基本的には本人と農業大学校生の息子さんと二人で200haの畑を耕作しています。十勝の平均的な畑作農家は30haほどですからほぼその5~6倍の面積になります。

格納庫の中で石山さんから説明を受けています。大型コンバインも修理しながら大事に使用しています。

直接、ヨーロッパから買ってきた自走式のポテトハーベスターなど

石山さんのところでは、SRUの会員でもあり肥料や農薬などの投入量も極力押さえ環境に配慮した農業を目指しています。

 

足寄町の(有)北十勝ファームさんでは、現在500頭ほどの日本短角牛を繁殖から肥育仕上げまでの一貫生産経営です。

繁殖は雄牛を放し、自然交配を行っています。

ファームマネージャーの上田さんは、以前、ホルスタインやF1、ヘレフォードなど黒毛和牛以外の牛は全て扱ったことがあるそうですが、いろいろな状況があり、現在の短角牛になりました。短角牛は粗飼料での増体効果に優れており、上田さんのところでも輸入飼料への依存度が極端に低く、地元で出るフスマや米ぬか、などを用いています。自給のデントコーンも肥育仕上げまで使用していますが脂の色などについても特別問題は無いそうです。また牛舎環境面では炭を埋設したり常温で最大の遠赤外線を発するブラックシリカなどを使っているせいで独特の牛舎臭もほとんど感じません。
私自身も幾度かこの短角牛を食べたことがありますが、輸入飼料に頼らなくヘルシーで牛肉本来の味がするとても美味しい肉です。


6月22日 十勝農業に危機意識は芽生えるのか?

ここ最近まともに太陽さんの顔を拝見できない日が続いています。6月としては8年ぶりに本土に台風の上陸があり、台風一過で好天が予想されたのですが、さすがの台風も冷たい空気を持つ高気圧にはかなわなかったようです。


恒例になっている、新総合振興局長をお招きしての農業経営部会の6月例会が先日開催されました。今年は道総研十勝農業試験場の場長も変わったと言うことで木村秀雄新場長にもお越しいただき「十勝畑作農業の課題と技術開発」というテーマで非常に興味深いお話を伺ったので報告させていただきます。

木村場長は十勝大樹町の酪農家に8人兄弟の末っ子として生まれ当然?農家の後継ぎになることは出来ず帯広畜産大学を卒業後、農業改良普及員として北海道内の農業生産現場を回っていました。前任は農政部農産振興課長として、私も昨年参加した「ナタネ会議」で一度お会いしていました。


木村場長はデーターを示しながら、十勝農業の半世紀の歩みを豆類の減少から、小麦の過作が招いた適正輪作体系の崩壊とそれに伴い、現在は先代が築き上げた土作りの遺産の上で営農を行っていると厳しく指摘し、既に小麦やビートなどにおいては網走管内より平均反収が劣る作物も出現していると報告され、また急激な酪農の規模拡大に伴い耕畜の連携がとれず、家畜糞尿問題や圃場における有機物の不足という現在はアンバランスな状態でもあると報告されました。

常日頃、生産現場を回っていて私自身も強く感じていたことであり、木村場長の報告には全く同感でした。

農商工連携や、六次産業化など農業経営の付加価値を高めることはもちろん大事なことですが、その生産の原点である「土作り」は絶対に怠ってはいけないということが改めて感じることが出来た例会でした。

 


6月18日 ECP「畑で考えるエネルギー問題」

ついに一月以上、書き込みの間が開いてしまいました。いかんいかん!
昨日は久しぶりのまとまった降雨になりました。一番牧草の収穫も始まっているようですが、作物にとっては恵みの雨になったと思います。

そんな雨の中、昨年より農業者戸別所得補償制度の対象品目になっているナタネ栽培とその利用に関して少しでも一般の方達に興味を持っていただくためにECP「畑で考えるエネルギー問題」で案内人を務めて来ました。

ナタネの栽培を行っていて当社の取引先でもある帯広市美栄町の外山農場さんでは、この時期菜の花から蜂蜜を採取するイベント、「農場体感!はちミーツー」にECPも便乗させていただきました。

ナタネ畑にて、外山孝祥さんの説明。晴れた日に撮影した外山さんの4.7ヘクタールの菜の花が満開の様子

上士幌町斎藤養蜂園の斎藤さんから、集められたばかりの菜の花の蜂蜜を舐めさせていただきました。蜂の体温と蜜の甘さに参加者一同感激してます!

雨降りでしたので、外山農場さんの倉庫へ移動し、遠心分離機で蜂蜜を集め、芽室町にある「カントリーブラン」さんの、パンに蜂蜜を塗って試食タイム!

ランチは、札幌で調理師の仕事をしている外山さんの弟さんも駆けつけ農場ならではの野菜を中心としたランチをたくさん頂きました。

もちろん当社の「十勝ナタネ油カス」もPRさせていただきました。

午後からは、私が役員を引き受けている㈱エコERC豊頃工場でナタネの搾油工程の視察

㈱エコERC豊頃工場は油本来の風味等を壊さないコールドプレス製法により油を搾っています。
この油が一般家庭や業務用に使用後、回収されディーゼルエンジンに使用されるBDF燃料になります。ナタネは景観作物、緑肥、蜂蜜、肥料、燃料など、とても幅広く利用することが出来る付加価値の高い作物であるということが今回のECP参加者の皆さんに理解していただけたのではないでしょうか。

 


9月3日 なたね会議

収穫の秋、本番を迎えていますが、お盆明け以降どうも十勝らしい秋晴れにお目にかかれません。台風の行方も気になります。

先日、札幌で道主催のナタネに関する打ち合わせ会議に㈱エコERCの役員として出席して来ました。今年度から始まった戸別所得補償制度の対象品目にソバとナタネが対象になったことを受けて3月にも一度開催され、今回が2度目の打ち合わせ会議でした。

ナタネは搾油用の子実収穫を目的に昭和30年代までは全国で20万ヘクタール以上の作付けがありましたが、一時は輸入物のナタネに押され作付面積も全国で数百ヘクタールまで落ち込みましたが、最近の環境問題や食に対する安全性の意識の変化などにより、平成22年度では全国で1700ヘクタールほどの作付けになり微増の傾向にあります。

しかしながら安定的な種子の確保や、使用農薬の登録問題、また搾られた油では輸入物のキャノーラ油との価格差は数倍以上あり、生産をしても販売などの面でも工夫が必要な状況もありますが搾りかすの肥料や飼料への利用、景観作物やエネルギー利用など可能性を含む作物であることは間違いありません。


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